3PL
阪部 晋様(物流事業部 副部長)/ 山畠 義一様(物流事業部 市販工程管理課 主任)
課題
解決
導入経緯
親会社のビジネスには代理店、ユーザー等に直接販売する「直販」、書店などで販売する「市販」という2つの商流がありますが、市販事業の拡大に物流面で対応する必要がありました。特に、グループ内物流だけでは取扱量に限りがあり、より多くの商品を取り扱うためグループの枠にとらわれない外販の比率を増やす必要が出てきました。従来システムは、グループ内の商品を扱うために構築されたものでしたので、新たな物流要件が生じる度に物流システムを構築するといった対応をしていました。しかし外販のシェアが拡大するにつれ、拡張性などに限界が出てきたのです。さらなる顧客獲得とハイクオリティを実現するには、拡張性の高い“外販モデル”のシステム構築が必須と考え、全社をあげての「新物流システム推進プロジェクト」が発足しました。そして親会社が、長年使い慣れた自社独自仕様の基幹システムから業界標準のERP(SAP)導入を決定したことを受け、物流を担う当社は、「新物流システム導入プロジェクト」にてマテハンシステムの全面リプレースとWMSの 新規導入を決定しました
選定理由
「新物流システム導入プロジェクト」では、業界標準のWMSパッケージを採用することによる業務拡大と変化への柔軟な対応を目指しましたが、ほかにも「破損と誤出荷などのミス率を限りなくゼロにし、クオリティを高める」、「作業効率を向上させ、残業ゼロを目指す」、「徹底した在庫管理を実現する」といった目標がありました。過去の経験により重装備な物流機器の導入は控え、シンプルかつ高機能な物流設備設計を行いました。 システム構築とマテハンの刷新をとりまとめて行えることを前提に、当社が示した課題・目標を踏まえてパッケージシステムの導入を提案してきた数社の中からトーヨーカネツソリューションズを選んだわけですが、最大の決め手となったのはWMSの導入実績です。どんなに優れたシステムでもきちんと機能させることができなければ導入効果は得られませんから、多様な導入実績がある同社ならば、出版業界の商慣行を理解したうえで活用しやすいシステムを構築してくれると期待しました。
導入後の効果
以前は納品から出荷までの一連業務において、人が伝票と商品の紐付け作業などを行っていたため、効率が悪くミスも避けられないのが実情でした。しかし新物流システムの導入後は、あらゆる場面で精度・効率が格段に高まりました。業界初のラベル—プ(リライタブルラベルシステム)は、従来用いられてきたオリコンへのラベル紙の貼り付け、剥がし作業が不要となったので、人的作業の大幅削減だけでなく、ラベル紙不要によるコストダウンとエコロジーの問題を一度に解決することができました。また、高頻度出荷アイテムには「デジタルピック&スキャン」、中・低頻度出荷アイテムには「HHT(ハンド・ヘルド・ターミナル)ピック&チェック」を行った後、ウェイトチェッカーで重量検品、さらに出荷検品作業を行う3重のチェックを行っています。これにより、従来は月数回あった数量ミスも年1回あるかないかといったほぼゼロの状態になり、ミスによる作業時間が短縮されたため就業時間内に終わるようになりました。さらに、WMSによって商品のロケーション別管理・在庫の一元管理が可能になり、物流システム全体の高品質化に大きく貢献しています。
今後の展望
当社が扱う物流品は書籍や雑誌などの出版物が中心ですが、8000アイテム以上の多品種であることが最大の特徴です。そうした特徴を踏まえての新物流システムの構築・導入でしたが、最近は大手取次店から「出版物の物流の仕組みを学ばせるため、新入社員の研修に利用させてほしい」といった依頼も受けるようになり、出版業界に特化した物流会社としての信頼性をさらに高められたと感じています。また、学研グループ以外の取引先も広がりつつあり、さらなる飛躍に社員のモチベーションが高まっています。
※この記事内容は2011年8月に再取材した内容を元に構成しています。記事内における数値データ、組織名、役職などは取材時のものです。