通販・EC
服部 功様(オムニチャネル推進室 総括マネジャー)
課題
解決
導入経緯
セブン&アイグループが推進する販売のオムニチャネル化にともない、都内に販売拠点となるネットスーパー専用店舗をオープンしました。従来のネットスーパーは2つのパターンで対応していました。①リアル店舗でお客様がお買い物するように従業員が商品をピックアップして、梱包・配送する。②大型店舗の一部に専用エリアを設けて、ピッキング・梱包・発送する。しかし、上記の2つの方法では、リアル店舗の従業員がネットスーパーの業務を兼務する必要があり、店舗への負荷が大きく、処理量にも限界がありました。そこで都内の販売拠点となるネットスーパー専用店舗を西日暮里にオープンすることになりました。当社としても初めての取り組みのため、サイトの構築から運用、情報システム、マテハン設備に至るまで、関係各社が全員参加するプロジェクト体制で物流の構築に挑みました。この中でTKSLには、お客様から注文を受けた商品を短時間で効率よく出荷できるマテハンシステムの構築をお願いしました。
選定理由
以前、グループ会社が通販センターを建築した際に、TKSLにお手伝いいただきました。限られた時間の中で仕様検討を行う必要があり、また工事においても非常に短い工期であったにも関わらず、高い技術力と応用力で応えていただき、そのときの対応がすばらしかったので今回もマテハンシステムの構築をお願いしました。ネットスーパー専用店舗で最も苦心したのは、前例がなかったことです。都内の店舗という限られたスペースの中でどんな物流の設計をすればよいか、悩んでいたときに、TKSLからお声掛けをいただき、ヨーロッパにネットスーパーのシステムを視察に行きました。
また設計の過程では工場にテストラインを設置、確認し、互いに膝を交えて打ち合わせを繰り返し、一つずつ課題を解決していきました。
導入後の効果
導入効果は非常に大きなものでした。当店舗では従来のネットスーパーの何倍もの注文に対応し、都内への短時間配送を実現しています。今回の案件でTKSLから導入したのは、制御システムと出荷搬送の為のコンベヤです。ネットスーパーでは“お造り品”といわれる寿司や惣菜、ケーキなどのデリケートな商品も搬送します。そのため衝撃を抑えるエコロベヤ、カーブは振動が少ないベルトカーブ、上下搬送は垂直搬送コンベヤを採用し、省スペース化と搬送時の荷崩れ防止を実現しました。また衛生面を考慮し、食品加工センターで使用される硬質メッキを施したローラーを採用するなど、細部までこだわりました。
作業環境にも配慮し、コンベヤの巻き込み事故を防ぐためのガードレールや搬送物がない時は停止するエコロベヤで安全性を確保し、さらに、ピッキングエリアに大型ディスプレイを設置して作業の進捗を可視化しました。説明看板や制御盤の表示も分かりやすくし、ラインに異常が発生した際も、音声ガイダンスにより異常の内容を分かりやすく通知する等、店舗で働く人達がストレスなく使えるシステムになっています。また、特徴的なものとしては、1階の架台上にバッファラインを設置し、配送トラックの積込みに合わせて待機したオリコンを払い出せるようにしました。
このバッファラインは出荷の心臓部であり、2、3階の荷揃え作業能力と1階での積込み作業能力の差を吸収し、かつ1階の荷積みエリアには出荷対象のケースのみを供給する事で、出荷エリアを省スペース化し高い生産性での出荷作業を可能としました。
今後の展望
今回の西日暮里店は初めての試みといえるネットスーパー専用店舗です。販売のオムニチャネル化の一環として、この新しいビジネスモデルをぜひ成功させたいと思っています。
この店舗で一つ課題だったのが騒音対策です。ローラーやオリコンに工夫を凝らし、建物にも防音を施して騒音を低減することができました。今後の展開として2店舗目を出す場合においても、エリアが住居地域ということもありえます。そうなると全く騒音は出せず、完全防音の施設にする必要があります。こういう困難な問題をクリアするためには、強いチームワークが必要です。今回の設計では、TKSLと手書きの草案の段階から共に携わってきました。とてもいいチームだと思いますので、できれば今後も協力してやっていければ良いと思っています。
※この記事内容は2015年11月に取材した内容を元に構成しています。記事内における数値データ、組織名、役職などは取材時のものです。